忘れたいけど忘れられない
「忘れたいけど忘れられない」
その人は、インターネットで調べてみたらどことなくタレントのAさんに似ていて、私の夢には、なぜだかその人の代わりにインターネットでしか知らない、タレントのAさんがよく出てくるのだった。
そしたら、とても悲しい気持ちになった。
あの頃の私は、郵便屋さんのバイクの音を耳にしただけで、インターネットをする手を止めて、ときめいてしまった。
バイクがうちの前を通り過ぎてしまう時は、いつもひどく落胆した。
バイクがうちの前で止まり、郵便屋さんがうちに郵便物を届けてくれたとわかった時はいつも、はやる気持ちが最高潮に達した。
郵便屋さんが行ってしまったことを窓の影から見届けてから、私は祈るような気持ちで、外に出て、はやる気持ちを抑えつつポストの中身を確かめる。
その人からの返事などどこにも来ていないことがわかると、深くため息をつく。
毎日が、それの繰り返しだった。
こりもせず、私は、来るはずのないその人からの手紙の返事を、待ち続けていた。
あほみたい。
一度深く心に刻まれてしまった傷は、決して消え去ることはないけど、忘れていることはできる。
ただ、何かの拍子に思い出してしまうたびに、その頃と全く同じ痛みが、またよみがえってたまらなくなってしまう。
できることなら、もうずっと、ずっと永遠に、忘れていたいような類の痛みなのだった。
どうせなら、インターネットみたいに、いらない気持ちの履歴も削除できたら良いのに。
インターネットみたいに・・・・
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